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連載 『スキです、西郷どん!!』

佐多宗二商店

2018年だけの限定販売。復活した本格焼酎「cangoxina」の話、聞いてきました

 

「cangoxina」を造るのは、南九州市・頴娃にある『佐多宗二商店』。
創業は1908年、110年の歴史があり代表銘柄である「晴耕雨読」や「不二才」、梅酒の「角玉」などで知られる蔵元です。

佐多宗二商店_代表銘柄

実は「cangoxina」は3年ほど前に休売していた商品。元々は宣教師ザビエルの来鹿450周年記念の関連商品として開発されたものでした。

「西郷どん」放送スタート後、各方面から問い合わせが相次ぎ、鹿児島を盛り上げる助けとなるならと2018年の1年間限定で販売することを決定。せっかく造るなら、と蔵人全員で話し合い、明治時代の焼酎が造られた時の製法にちなんだ本格焼酎に仕上げました。

特にこだわったのは「蒸留」の部分。アルコールの元となる“もろみ”を熱し、蒸気を冷やすことでできるのが蒸留酒。焼酎もこの方法で造られる蒸留酒です。

現在の日本では、もろみに直接蒸気を入れて蒸留する「直接加熱」がほとんど。これは粘性の高い芋のモロミをスムーズに蒸留するために考案された日本ならではの方法です。

佐多宗二商店_本館2

(直接加熱式の蒸留機)

 

一方、もろみを入れた器を外側から蒸気で温める「間接加熱」は、世界の蒸留酒のスタンダード。日本でも直接加熱を取り入れるまでは、この方法で造られていたとあって、今回の「cangoxina」は間接加熱で造られています。

佐多宗二商店_イタリア

(イタリアから取り寄せた、間接加熱用の蒸留機。これでcangoxinaが造られています)

 

芋焼酎が造られはじめたのは幕末〜明治にかけてと言われていて、芋焼酎を鹿児島の特産品に押し上げたのはほかでもない斉彬公でした。軍備の近代化のために必要だった工業用のアルコールの原料に、鹿児島の土壌で米よりもよく育つサツマイモを選び、それをさらに飲料用に改良するようにと命じたのだそうです。

その頃造られていた芋焼酎のアルコール度数は、蒸留の技術からすると28度だと考えられています。なので、cangoxinaも28度。昔ながらの味わい、感じてみてください。ちなみに蒸留前のもろみは、代表銘柄でもある「不二才」と同じものを使っています。飲み比べて蒸留の違いを楽しむ、なんてツウな楽しみ方をしてみるのもいいかもしれません。

 

cangoxinaをおさめる特徴的ボトルは、佐多宗二商店のオリジナルのフォルム。注ぐ時には口を上に、が正しい方法です。ちょっとドキドキします。

佐多宗二商店_注ぎ方

現在は、仙巌園内「島津のれん」のほか、コセド商店で発売中(2000円)。
限定商品なので、みつけたら即ゲットがオススメですよ!

 

 

<おまけ>
蔵の中の見学もさせてもらいました!

佐多宗二商店_青い

【本館】
コチラは直接加熱蒸留機がある本館。
建物の中に入るとすぐ、甘い芋の香り。
麹菌を大切にするため、仕込みの時期はほとんどの時間を掃除してるんですよと教えてくださいました。納豆を食べない、なんて暗黙のルールもあるそうです。(納豆菌ってものすごく強いんですって!)

佐多宗二商店_本館1

 

 

佐多宗二商店_赤屋根

【赤屋根製造所】
赤い屋根が特徴的なこちらには、前述のイタリア製に加え、フランス・ドイツ製の間接加熱蒸留機が全部で4基あります。どれもフォルムがアーティスティックで美しい!

佐多宗二商店_フランス

こちらはフランス製。ブランデーの蒸留などに使います。

 

佐多宗二商店_ドイツ

これはドイツ製。この時まさに「スピリッツ」の蒸留中。ベースとなる芋のもろみに、ハーブやスパイスなど様々なボタニカルをつけ込み蒸留することで造られるスピリッツ。車だったので香りだけでしたが、素材によって変化する香りを十分に楽しませてもらいました。

 

こうして造られたスピリッツがこちら。

佐多宗二商店_スピリッツ2

柚&蓬、お茶、山椒、生姜、ジュニパーベリー、梅…鹿児島ならではの「芋」が進化を遂げた姿です。

 

ここで会う蔵人たちは、芋焼酎のこと、蒸留のこと、スピリッツのことを皆熱く語ってくれました。「芋焼酎」という概念だけにとらわれず、世界を見据えて新しいものを造る蔵人たちの姿に、明治維新を成し遂げた、薩摩の偉人たちの姿を見た気がしたのでした。

普段は蔵の見学は受け付けていないそうですが、問い合わせがあれば対応も検討するとのことでした。興味がある方はぜひ足を運んでみてください。「お酒」との向き合い方、変わるかもしれません。

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2018年3月、現在の情報です。
最新の情報はご確認の上お出かけください。

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